名古屋地方裁判所 平成5年(ワ)2365号 判決 1997年1月27日
愛知県小牧市大字上末字東山三五〇九番地の一九〇
原告
株式会社ホウトク
右代表者代表取締役
安藤茂
右訴訟代理人弁護士
吉井参也
右輔佐人弁理士
金子昭生
大阪市東成区大今里南六丁目一番一号
被告
コクヨ株式会社
右代表者代表取締役
黒田章裕
右訴訟代理人弁護士
村林隆一
同
右今中利昭
同
右吉村洋
同
右浦田和栄
同
右松本司
同
右辻川正人
同
右東風龍明
同
右片桐浩二
同
右岩坪哲
同
右田辺保雄
右輔佐人弁理士
小谷悦司
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、別紙物件目録記載の物品を製造し、販売してはならない。
2 被告は、その保管する別紙物件目録記載の物品を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金五三七七万円並びに内金二三九七万円に対する平成五年七月二一日から支払済に至るまで年五分の割合による金員、内金一一六七万円に対する平成六年四月一四日から支払済に至るまで年五分の割合による金員及び内金一八一三万円に対する平成七年二月七日から支払済に至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。
4 訴訟費用は、被告の負担とする。
5 第1項ないし第3項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文と同趣旨
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1 原告の実用新案権
(一) 原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。
登録番号 第一六九三〇八四号
考案の名称 テーブルにおける支脚構造
出願日 昭和五八年四月二八日
公告日 昭和六二年一月八日
登録日 昭和六二年八月二六日
(二) 本件実用新案権の登録請求の範囲には、「両側方の両支脚A1、A2の上部にまたがる平板製甲板Bを水平の使用状態から両支脚A1、A2の上部前後側で垂直にした収納状態に変化できるようにして両支脚A1、A2により支持するように装設し構成するテーブルにおいて、両支脚A1、A2とも上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状の2本の脚杆a1、a2よりそれぞれ形成し、両支脚A1、A2における外側方と内側方の脚杆a1、a2の下部が前後方向の同一方向に向くようにしてそれぞれ両脚杆a1、a2の上部1、1を左右に並設して結合し構成したことを特徴とする支脚構造」と記載されている。
本件実用新案権の考案の詳細な説明及び願書添附図面は、別紙実用新案公報記載のとおりである。
(三) 本件考案の構成要件は、次のとおりである。
(1) 両側方の両支脚A1、A2の上部にまたがる平板製甲板Bを水平の使用状態から両支脚A1、A2の上部前後側で垂直にした収納状態に変化できるようにして両支脚A1、A2により支持するように装設し構成するテーブルにおいて、
(2) 両支脚A1、A2とも上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状の二本の脚杆a1、a2よりそれぞれ形成し、
(3) 両支脚A1、A2における外側方と内側方の脚杆a1、a2の下部が前後方向の同一方向に向くようにしてそれぞれ両脚杆a1、a2の上部1、1を左右に並設して結合する。
(4) 右の構成を備えた支脚構造である。
(四) 本件考案の作用効果は、次のとおりである。
(1) 甲板Bを垂直にして収納状態にした多数のテーブルを、それぞれの支脚A1、A2の接近により充分に接近させて、狭いスペースに多数のテーブルを良好に収容することができる。
(2) 横方向には脚杆a1、a2の下部2、2が係合することになって、隣り合うテーブルどおしが外れないように噛み合うようにして整然と収納することができる。
(3) しかも、使用状態では、二叉状となる両支脚A1、A2により甲板Bを堅固に安定良く支持することができる。
(4) 簡単な構造にして製作も容易で好適に実施できる。
2 被告の行為
被告は、遅くとも平成三年一二月から別紙物件目録記載の会議用テーブル(以下「被告物件」という。)を製造販売している。
3 被告物件の構造
被告物件の構造は、次のとおりである。
(一) 左右一対の支脚D1、D2の上部にまたがる平板製甲板Bを水平の使用状態から両支脚の上部前後側で垂直にした収納状態に変化できるようにして両支脚D1、D2により支持するように装設し構成するテーブルにおいて、
(二) 両支脚D1、D2は、いずれも上部支脚Daと下部支脚Dbにより構成され、上部支脚Daは、二本の扁平角筒状の脚杆Da1、Da2を直立状態で前後に一定間隔をおいて並設し脚杆Da1及びDa2の上端部に跨って甲板支持板4を溶接するとともに、同下端部より若干上方位置の両脚杆Da1、Da2の間に断面<省略>状のスペーサー兼下部支脚連結金具5を内方に突出する状態で溶接することにより形成され、下部支脚Dbは、二本の扁平角筒状の脚杆Db1、Db2にいずれもその上部に垂直部分が存在し、それに続く部分がノ字状に伸びているが、一方の脚杆Db1は前方に、他方の脚杆Db2は後方に伸びており、両脚杆Db1、Db2は互いにわずかに開離して左右に並設する状態でその上端部を断面<省略>状の結合金具6により溶接することにより形成され、下部支脚Dbの上端部を上部支脚Daを構成する二本の脚杆Da1、Da2間に脚杆Da1及び脚杆Da2と脚杆Db1とは正面から見て同一垂直面になるように配置して嵌入し、下部支脚Dbの結合金具6の上面を下部支脚連結金具5の下面に突き合わせてねじ止めすることにより上部支脚Daと下部支脚Dbを連結し、
(三) 両支脚D1、D2における脚杆Db1、Db2中、前方にノ字状に伸びる部分を有する脚杆Db1を外側に位置せしめ、後方にノ字状に伸びる部分を有する脚杆Db2を内側に位置せしめた、
(四) テーブルにおける支脚構造
4 構成の対比等
(一) 被告物件は、次のとおり、本件考案の構成要件を充足する。
(1) 構成要件(1)について
被告物件が、本件考案の構成要件(1)を充足していることは、明らかである。
(2) 構成要件(2)について
<1> 被告物件においては、両支脚D1、D2が、いずれも上部支脚Daと下部支脚Dbによって構成されているが、これは運搬の便宜のためであり、組み立てて使用が開始された後は、上部支脚Daと下部支脚Dbとは、連結金具5と結合金具6とによって結合され、常に一体の構造となる。
したがって、被告物件においては、脚杆Da1、Da2、Db1によって構成される脚杆(以下「脚杆X」という。)と脚杆Db2によって構成される脚杆(以下「脚杆Y」という。)とを観念することができる。
すなわち、被告物件の上部支脚Daの脚杆Da1、Da2及び下部支脚Dbの脚杆Db1の上部垂直部分が、本件考案の脚杆a1の上部1に、被告物件の下部支脚Dbの脚杆Db1の下部のノ字状部分が、本件考案の脚杆a1の下部2に、被告物件の下部支脚Dbの脚杆Db2の上部の垂直部分が、本件考案の脚杆a2の上部1に、被告物件の下部支脚Dbの脚杆Db2の下部のノ字状部分が、本件考案の脚杆a2の下部2にそれぞれ該当する。
なお、被告物件の結合金具6は、本件考案の脚杆a1を形成する役割と脚杆a1、a2の各上部1、1を左右に並設して結合する役割とを果たしている。
<2>Aa 本件考案の構成要件(2)に「前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状」とあるのは、脚杆a1、a2の一方の下部2が前方向に向けて「屈曲し垂下する形状」を有し、他方の下部2が後方向に向けて「屈曲し垂下する形状」を有していることを意味する。
すなわち、「前後方向に偏位して」とは、脚杆a1、a2の下部2、2が前方向又は後方向に向けられる方向性を示すものであり、形状そのものは、「屈曲し垂下する」によって示されている。
そして、「屈曲」とは、前方又は後方への位置の移動と同時に下方への位置の移動を含む表現であり、「垂下」とは、下方への位置の移動と同時に前方又は後方への位置の移動を含む表現である。
本件考案においては、別紙脚杆説明第1図(甲図)におけるQ(1)からR(1)までが屈曲している部分であり、R(1)からS(1)までが垂下している部分である。
b しかるところ、被告物件の脚杆X、Yは、いずれも上部1、1が垂直であり、下部2、2は、脚杆Xを構成する脚杆Db1が前方に、脚杆Yを構成する脚杆Db2が後方にそれぞれ向けて(偏位して)、ノ字状に下方に伸びて、床面に到達する(屈曲し垂下する)形状を有している。
被告物件においては、脚杆Db1については別紙脚杆説明第2図(乙図)におけるQ(2)からR(2)までが屈曲している部分であり、R(2)からS(2)までが垂下している部分であり、脚杆Db2については別紙脚杆説明第3図(丙図)におけるQ(3)からR(3)までが屈曲している部分であり、R(3)からS(3)までが垂下している部分である。
Ba 仮に、本件考案における「前後方向に偏位して」との要件が形状を表すものであり、本件考案の脚杆a1、a2の下部2、2が偏位、屈曲、垂下という形状を備えていることを要するとしても、被告物件においても、脚杆Db1については別紙脚杆説明第2図(乙図)におけるR(2)において屈曲しており、脚杆Db2については別紙脚杆説明第3図(丙図)におけるR(3)において屈曲しているから、偏位、屈曲、垂下という形状の要件を充たしている。
b また、仮に、垂下が「垂直に下降」を意味しているとしても、垂下の要件は、入れ子式の収用を可能ならしめるためのものであり、また、垂下の態様には種々のものがあるから、被告物件の脚杆Db1、Db2のノ字状に垂れ下がった部分は、実質的に本件考案の垂下と同一である。
C 本件考案の脚杆a1、a2の下部2、2の形状が屈曲、垂下であると、偏位、屈曲、垂下であるとを問わず、被告物件の脚杆Db1、Db2の下部の形状は、本件考案のそれと同様に入れ子式の機能を果たし、狭い場所にテーブルを収納する作用効果を達成せしめている。
そして、右形状は、本件考案の下部の形状と置換容易であり、また、本件実用新案権の出願当時、当業者において容易に想到し得るものであったから、その構成は、本件考案の下部の構成と均等である。
<3> したがって、被告物件の脚杆X、Yは、本件考案の脚杆a1、a2に該当する。
仮に、本件考案の脚杆a1が上から下まで継ぎ目のないものでなければならないとしても、被告物件の継ぎ目のある脚杆は、脚杆の下部の形状(屈曲、垂下)の点において、また、外側方と内側方の脚杆の下部が前後方向の同一方向に向くようにする点において、入れ子式テーブルを目的とする本件考案の支脚構造と同一に機能し、同一の作用効果を奏するものであり、本件考案の技術的範囲内にあるから、本件考案の脚杆a1、a2と実質的に同一である。
<4> よって、被告物件は、本件考案の構成要件(2)を充足している。
(3) 構成要件(3)について
<1> 本件考案の構成要件(3)に「結合する」とあるのは、脚杆a1、a2の上部1、1が密着していることを要求するものではなく、幾らかの間隙があることを排除するものではない。
<2> 被告物件においては、両支脚D1、D2が、いずれも外側の脚杆Xの下部(脚杆Db1の下部)が前方に、内側の脚杆Yの下部(脚杆Db2の下部)が後方に向かってノ字状に伸びるように、脚杆X、Yの上部の垂直部分(脚杆Db1、Db2の上部の垂直部分)が互いにわずかに開離して左右に並設する状態で結合されている。
<3> よって、被告物件は、本件考案の構成要件(3)を充足している。
(4) 被告物件の右3(四)の構造が、本件考案の構成要件(4)を充足することは明らかである。
(二) 被告物件は、本件考案と同一の作用効果を奏する。
(三) 右のとおり、被告物件の右3(一)ないし(四)の構造は、本件考案の構成要件(1)ないし(4)を充足し、また、被告物件は、本件考案と同一の作用効果を奏するから、被告物件は、本件考案の技術的範囲に属する。
5 損害
(一) 被告が平成四年二月一日から平成七年一月三一日までの間に製造販売した被告物件の台数は、別表第5欄、第7欄及び第9欄記載のとおりである。
(二) 被告物件の一台当たりの希望小売価格は、別表第2欄記載のとおりであり、被告が販売代理店に販売する価格は、右価格の四五パーセントであるから、別表第3欄記載のとおりである。
(三) そして、原告における本件考案の実施品(以下「原告物件」という。)が、バブル景気の崩壊後も順調な売れ行きを示していることからすると、本件実用新案権は高い実施価値を有するものであり、これについて通常実施権を許諾する場合の実施料は、右販売価格の七パーセントを下回ることはない。
したがって、被告物件一台当たりの実施料相当額は、同表第4欄記載のとおりである。
(四) 以上の次第で、被告物件の実施料相当額は、別表第6欄、第8欄及び第10欄記載のとおりであるから、一万円未満を切り捨てると、平成四年二月一日から平成五年六月三〇日までの合計が二三九七万円、同年七月一日から平成六年二月二八日までの合計が一一六七万円、同年三月一日から平成七年一月三一日までの合計が一八一三万円となり、これらの総計は五三七七万円である。
6 よって、原告は、被告に対し、本件実用新案権に基づき、被告物件の製造販売の差止め及び廃棄を求めるとともに、不法行為による損害賠償金五三七七万円並びに内金二三九七万円に対する不法行為の結果発生後である平成五年七月二一日から支払済に至るまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金、内金一一六七万円に対する不法行為の結果発生後である平成六年四月一四日から支払済に至るまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金及び内金一八一三万円に対する不法行為の結果発生後である平成七年二月七日から支払済に至るまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払をすることを求める。
二 請求の原因に対する被告の認否と反論
1 請求の原因第1項ないし第3項の事実は、認める。
2 請求の原因第4項について
(一) (一)は、争う。
(1) 本件考案が出願された当時は、<1>甲板を水平の使用状態から垂直の収納状態に変化できるようにすること(乙二、三、六)、<2>前後に偏位した脚杆(前脚と後脚)を左右に位置をずらせることにより、前後に位置するテーブルや椅子の脚杆どうしを入れ子式に重ね合わせて、狭いスペースに十分接近させて収容しうるようにすること(乙四ないし六)、<3>テーブルの内側の脚を前方に曲げ、外側の脚を後方に曲げることによって、積み重ねたようにスペースを小さくすること(乙六)が、それぞれ公知の技術であった。
したがって、本件考案の構成要件は、右の公知技術を考慮して解釈されるべきものである。
(2) 構成要件(2)について
<1> 本件考案の脚杆a1、a2は、それぞれ、上部1と下部2とから成り立っており、それぞれ、上から下まで連続した一本の脚杆でなければならない(本件実用新案権の明細書の考案の詳細な説明には、脚杆a1、a2が継目を有してよい旨の記載はなく、かつ、その示唆さえされていない。)。したがって、本件考案の脚杆a1は、継目のない一本の脚杆であることを要する。
しかるに、被告物件の脚杆Da1、Da2は、前後に一定の間隙を置いて並設した二本の脚杆であり、Db1、Db2も互いに開離する状態で左右に並設した二本の脚杆であって、脚杆Da1+脚杆Da2と脚杆Db1とは、決して一本の脚杆ではないから、これが、本件考案の脚杆a1に該当するということはありえない。
<2>A 構成要件(2)中の「前後方向に偏位して屈曲し垂下する」の意味について、考案の詳細な説明においては、「前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状となるようにそれぞれ形成し」と記載しているのみでそれ以上の具体的説明はない。したがって、その意味は、願書添付図面によるしかないが、別紙実用新案公報の第1図からは、「前後方向に偏位して」というのは、脚杆が前後方向に向かって折れ曲がっていること、「屈曲し」というのは、脚杆が再び下方に向かって折れ曲がっていること、「垂下する」というのは、脚杆が垂直に下降していることをそれぞれ意味するものと解釈するしかない。
B しかるところ、被告物件においては、脚杆Db1、Db2は、脚杆説明第2図(乙図)におけるQ(2)、R(2)間と脚杆説明第3図(丙図)におけるQ(3)、R(3)間とにおいて、前後方向に向かって一度折れ曲がっているのみであるから、前後方向に偏位はしているが、「屈曲」はしておらず、かつ、垂直に下降してはいないから、右の意味での「垂下」はしていない。
C 本件考案の脚杆a1、a2の下部2、2は、考案の詳細な説明中で示されている実施例においては、別紙実用新案公報の第2図において示されているように、前方又は後方から見たとき、両者が密着している。そして、他の態様のものについては、考案の詳細な説明において何等開示されていない。したがって、両者は、右図面どおり密着した状態で前後方向に偏位して屈曲し垂下していなければならないものと解すべきである。
しかるに、被告物件のDb1とDb2とは、別紙物件目録の第2図、第6図に示されているように一定の間隙を置いて並設されているから、右の要件を充たしていない。
<3> 右のように、被告物件の脚杆Db1、Db2は、本件考案の「前後方向に偏位し屈曲し垂下する」という形状になっていない。そして、そのような形状、構造を採ったことによって、本件考案の脚杆a1、a2の下部2、2とは異なる作用効果を奏するものであるから、両者は、実質的に同一ではなく、また、均等でもない。
<4> したがって、被告物件は、本件考案の構成要件(2)を充足していない。
(3) 構成要件(3)について
<1> 構成要件(3)の「それぞれ両脚杆a1、a2の上部1、1を左右に並設して結合し」という要件については、考案の詳細な説明の実施例においては、別紙実用新案公報の第2図、第6図のとおり脚杆a1、a2の上部1、1が密着したものとなっており、それ以外の結合構造は、開示されていない。したがって、構成要件(3)の「結合」は、密着して結合していることを意味するものと解すべきである。
<2> しかるところ、被告物件においては、脚杆Db1、Db2の各垂直部分は、互いにわずかに開離して左右に並設する状態で、上端部が断面<省略>状の結合金具6に溶接されており、相互に密着してはいない。
<3> よって、被告物件は、本件考案の構成要件(3)を充足していない。
(4) 本件考案の支脚構造と被告物件の支脚構造とは、全く異なり、また、その作用効果も異なるから、両者が実質的に同一であるとはいえない。
(二) (二)は、争う。
(1) 被告物件は、両支脚D1、D2をいずれも上部支脚Daと下部支脚Dbに分離し、しかも下部支脚Dbを2本の扁平角筒状の脚杆Db1、Db2を互いに僅かに開離して左右に並設する状態でその上端部を断面<省略>状の結合金具6により溶接して構成することにより、前後のテーブルの支脚を入れ子式に近接する際、二本の扁平角筒状の脚杆Db1、Db2が互いに左右に開離し適度の間隙を有している結果、極めてスムースに近接密着せしめることができる効果を奏する。 本件考案のように、上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状の上から下まで連続した二本の脚杆a1、a2の上部1、1を左右に並設して結合した構成とすると、前方又は後方から見たとき脚杆a1、a2の下部が密着した状態となっているため、前後のテーブルの支脚を入れ子式に近接させる際、スムースに近接させることができない。特に、この種のテーブルは、キャスターを具備していないと多数のテーブルをスムースに近接せしめて収容することができないものであるが、本件考案のように脚杆a1、a2が左右に密着結合していると、キャスターは左右及び前後に首を振る構造となっているため、後ろのテーブルの脚杆a1のキャスターと前のテーブルの脚杆a2のキャスターとが衝突してしまい、前後のテーブルを近接することが不可能になってしまう。
そこで、本件考案の実施品である原告物件においては、前方に偏位する脚杆a1を前方に向けて、若干、八の字状に開脚せしめることにより右の欠陥を克服しているが、その構成では、多数のテーブルを近接収用した際、支脚を整然と、かつ、スムースに整列させることが難しい。
被告物件は、狭いスペースに多数のテーブルをスムースに近接収容する上において、原告物件と異なる構造を採ることにより、右のような本件考案の欠点を改良しているのである。
したがって、被告物件の右構成は、本件考案にはない右のような新たな作用効果を奏している。
(2) 本件考案においては、脚杆a1、a2が高い位置で屈曲しているため、この部分が突出しており、使用状態において着座者の脚の側部方向への出し入れに邪魔になり、かつ、この部分に着座者の脚が当たるため塗装やメッキが剥げやすい。
これに対し、被告物件では、前後方向に偏位した後、ノ字状に垂れ下がるという構成にしたことにより、本件考案のように高い位置で前後方向に突出する部分がなく着座者の側部方向への脚の出し入れの邪魔にならないとともに、脚が当たり難いので塗装やメッキも剥げ難い利点がある。
したがって、被告物件の構成は、右の点において、本件考案にはない新たな作用効果を奏している。
(3) 被告物件においては、両支脚D1、D2は、脚杆Da1、Da2、Db1、Db2を、下部支脚連結金具5、結合金具6等によって結合するという複雑な構成が採られている。
したがって、被告物件は、本件考案の作用効果(4)「簡単な構造であり製作も容易である」という作用効果を有していない。
(三) (三)は、争う。
3 請求の原因第5項について
(一) 請求の原因第5項(一)、(二)の事実は、認める。
(二) 請求の原因第5項(三)の事実は、否認する。
本件実用新案権の実施料率は、二パーセントが相当である。
また、本件実用新案権は、支脚構造のみに関するものであるから、利用率も考慮すべきであるところ、被告物件における本件実用新案権の利用率は、次のとおりである。
品番 利用率
KT-S一五〇(K2、M、WB) 一三・六七パーセント
KT-S一五一(K2、M、WB) 一二・八七パーセント
KT-S一五二(K2、M、WB) 一三・八一パーセント
KT-S一五三(K2、M、WB) 一三・〇一パーセント
KT-PS一五〇(K2、M、WB) 一〇・〇三パーセント
KT-PS一五一(K2、M、WB) 九・七八パーセント
KT-PS一五二(K2、M、WB) 一〇・一一パーセント
KT-PS一五三(K2、M、WB) 九・八七パーセント
(三) 請求の原因第5項(四)の事実は、否認する。
4 請求の原因第6項は、争う。
三 被告の反論に対する原告の反論
1 構成要件(2)について
本件考案においては、脚杆a1、a2の下部2、2が前方又は後方から見て、密着している(間隙がない)かどうかは、構成要件になっていない。
2 構成要件(3)について
構成要件(3)においては、「密着」との言葉は使用されていない。また、本件考案の脚杆a1、a2の上部1、1については、その間に多少の間隙が存しても、結合することは可能である。そして、そのような間隙があるかどうかは、本件考案の技術的意義に違いをもたらすものではない。したがって、構成要件(3)の「結合し」が、密着して結合することを意味するものでないことは明らかである。
仮に、密着して結合していることが要件であるとしても、被告物件のようにわずかな間隙を設けた結合は、密着した結合と実質的に同一である。
3 被告物件の作用効果について
被告物件は、本件考案に運搬の便宜を考えた構造を付加しているため若干複雑にはなっているが、本件考案を採用している部分においては、本件考案どおり、簡単な構造で製作も容易であり好適に実施できるという作用効果を達成している。
第三 証拠
本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。
理由
一 請求の原因第1項ないし第3項の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、次に請求の原因第4項(構成の対比等)について判断する。
1 構成要件について
(一) まず、構成要件(2)は、「両支脚A1、A2とも上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状の二本の脚杆a1、a2よりそれぞれ形成し、」というものであるから、本件考案においては、両支脚A1、A2がそれぞれ二本の脚杆a1、a2より形成されていなければならないことは明らかである。そして、脚杆a1、a2は、考案の詳細な説明における実施例、願書添付図面において、それぞれ全く継ぎ目のない一本の脚杆として表示されており、考案の詳細な説明には右各脚杆に継ぎ目があってもよいかどうかについて全く記載されていない。
他方、構成要件(3)は、「両支脚A1、A2における外側方と内側方の脚杆a1、a2の下部が前後方向の同一方向に向くようにしてそれぞれ両脚杆a1、a2の上部1、1を左右に並設して結合する」というものであって、右のような二本の脚杆a1、a2の上部1、1を左右に並設して結合することが要件となっている。
そして、右のような支脚構造であることから、本件考案は、使用状態では、二叉状となる両支脚A1、A2により甲板Bを堅固に安定良く支持することができるという作用効果(本件考案の作用効果(3))と簡単な構造にして製作も容易で好適に実施できるという作用効果(本件考案の作用効果(4))を奏するとされている。
そうすると、本件考案における脚杆a1、a2は、それぞれ、その結合前の状態において、一本の脚杆としての形状と支持力を有する脚杆を意味しているというべきであり、本件考案における支脚A1、A2は、いずれも、そのような二本の脚杆をその上部において結合した構成となっていなければならないというべきである(本件考案の詳細な説明に記載されている実施例では、「外側方の脚杆a1の上部1と内側方の脚杆a2の上部1とを左右に並設して上下2ケ所のリベット3、3により結合し構成する」とされており、結合態様としても右のような意味での二本の脚杆の存在を前提とした上で、それらを結合する支脚構造しか開示されていない。)。
もつとも、二本の脚杆を差込式、ねじ込み式等の方法により連結したものであつても、それ自体で一本の脚杆としての形状と支持力を有するものは、差込部分、ねじ込み部分等において継ぎ目があっても、脚杆a1、a2に該当するといえる。
(二) 次に、構成要件(2)においては、脚杆a1、a2の下部2、2は、「前後方面に偏位して屈曲し垂下する形状」を有するものとされているところ、本件考案の登録請求の範囲の記載のみでは、「前後方向に偏位して屈曲し垂下する」ということの意味は明らかではないから、その意味は、考案の詳細な説明と願書添付図面とにより判断するしかないというべきである。
しかし、考案の詳細な説明においては、図面に示した実施例の説明として、「下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状となるようにそれぞれ形成し」としか記載されていないから、その形状は、図面により判断するしかないところ、別紙実用新案公報記載のとおり、その図面(第1図、第4図、第5図、第7図)には、別紙脚杆説明第1図(甲図)のような下部の形状が記載されている。
そうすると、願書添付図面からは、「前後方向に偏位して」というのは、一方の脚杆が前方に向かって折れ曲がり、他方の脚杆が後方に向かって折れ曲がっていること、「屈曲し」というのは、脚杆が再び下方に向かって折れ曲がっていること、「垂下する」というのは、下方に折れ曲がった脚杆がそこから垂れ下がった形状となっていることをそれぞれ意味するものと解するしかない。したがって、本件考案においては、脚杆a1、a2の下部2、2は、右のような偏位、屈曲、垂下という形状を有しているものでなければならないというべきである。
右の点につき、原告は、「前後方向に偏位して」とは、脚杆a1、a2の下部2、2が前方向又は後方向に向けられるという方向性を示すものであって、形状そのものは、「屈曲し垂下する」によって示されていると主張する。しかしながら、「前後方向に偏位して」が形状を示すものでないとすれば、図面に示された実施例においては、別紙脚杆説明第1図(甲図)におけるQ(1)からR(1)までの部分で屈曲し、さらにAの部分で屈曲し、その後垂下していることになるが、そうなると、唯一の実施例において、屈曲、屈曲、垂下という形状が示されていることになるから、右のような解釈は採用できない(原告は、別紙脚杆説明第1図(甲図)におけるQ(1)からR(1)までが屈曲している部分であり、R(1)からS(1)までが垂下している部分であると主張するが、R(1)からS(1)までの部分は、Aの部分において上部に突出しているから、そのような突出のあるものを垂下していると見ることはできない。)。
なお、証拠(甲一五、一六)と弁論の全趣旨によると、本件実用新案の出願当時、テーブルの脚杆の形状として、脚杆の下部がノ字状になって床面に達するものが公知であったことが認められる。したがって、本件考案における脚杆の下部の形状に右のようなノ字状のものをも含める場合には、ノ字状のものも実施例として掲げ、あるいは考案の詳細な説明においてノ字状のものを含むことを注記してしかるべきであるが、本件考案については、考案の詳細な説明においても、願書添付図面においても、ノ字状のものを含むことを示す記載はない。
2 本件考案と被告物件との構成の対比
(一) 一において判示したところによると、被告物件の支脚は、次のような構造になっている。
(1) 両支脚D1、D2は、いずれも上部支脚Daと下部支脚Dbにより構成されている。
(2) 上部支脚Daは、二本の扁平角筒状の脚杆Da1、Da2を直立状態で前後に一定間隔をおいて並設し脚杆Da1及びDa2の上端部に跨って甲板支持板4を溶接するとともに、同下端部より若干上方位置の両脚杆Da1、Da2の間に断面<省略>状のスペーサー兼下部支脚連結金具5を内方に突出する状態で溶接することにより形成されている。
(3) 下部支脚Dbは、二本の扁平角筒状の脚杆Db1、Db2にいずれもその上部に垂直部分が存在し、それに続く部分がノ字状に伸びているが、一方の脚杆Db1は前方に、他方の脚杆Db2は後方に伸びており、両脚杆Db1、Db2は互いにわずかに開離して左右に並設する状態でその上端部を断面<省略>状の結合金具6により溶接することにより形成されている。
(4) 下部支脚Dbの上端部を上部支脚Daを構成する二本の脚杆Da1、Da2間に脚杆Da1及び脚杆Da2と脚杆Db1とは正面から見て同一垂直面になるように配置して嵌入し、下部支脚Dbの結合金具6の上面を下部支脚連結金具5の下面に突き合わせてねじ止めすることにより上部支脚Daと下部支脚Dbとを連結している。
(二) 原告は、被告物件の右のような構造を前提とした上、被告物件の上部支脚Daの脚杆Da1、Da2及び下部支脚Dbの脚杆Db1の上部垂直部分が、本件考案の脚杆a1の上部1に、被告物件の下部支脚Dbの脚杆Db1の下部のノ字状部分が、本件考案の脚杆a1の下部2に該当すると主張する。
しかしながら、脚杆Da1、Da2は、甲板支持板4、スペーサー兼下部支脚連結金具5とともに一体となって上部支脚Daを構成しており、脚杆Db1は、脚杆Db2、結合金具6とともに一体となって下部支脚Dbを構成している。そして、被告物件は、そのような上部支脚Daと下部支脚Dbとをスペーサー兼下部支脚連結金具5と結合金具6とを介してねじ止めの方法により連結した構成となっている。したがって、構造的には、脚杆Da1、Da2は、上部支脚Daの構成部分として、連結金具5と結合金具6とを介在させた上、下部支脚の構成部分である脚杆Db1、Db2の双方と結合しているのであって、被告物件の支脚構造においては、脚杆Da1、Da2と脚杆Db1とをもって、前示の意味での一本の脚杆であると見ることはできない。
したがって、被告物件における脚杆Da1、Da2と脚杆Db1とは、本件考案における脚杆a1には該当しないというべきである。
(三) 次に、原告は、被告物件の脚杆Db1とDb2の下部が構成要件(2)の「前後方向に偏位して屈曲し垂下する」という要件を充足していると主張する。
しかしながら、右の要件が、偏位、屈曲、垂下という形状を意味することは前示1(二)のとおりであるところ、被告物件においては、脚杆Db1については別紙脚杆説明第2図(乙図)のQ(2)からR(2)までの間で偏位し、R(2)からS(2)までの間で垂下し、脚杆Db2については別紙脚杆説明第3図(丙図)のQ(3)からR(3)までの間で偏位し、R(3)からS(3)までの間で垂下しているが、両支脚とも、偏位した後屈曲してはいないから、いずれも、右要件を充たしていないことになる。
なお、原告は、脚杆Db1については別紙脚杆説明第2図(乙図)のR(2)において、脚杆Db2については別紙脚杆説明第3図(丙図)のR(3)において、それぞれ屈曲していると主張するが、いずれも右の部位で屈曲しているとはいえない。
3 作用効果の対比
(一) 別紙実用新案公報記載のとおり、本件考案における実施例では、上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状の上から下まで連続した二本の脚杆a1、a2の上部1、1を左右に並設して結合した構成となっているが、弁論の全趣旨によると、そのような構成では、前方及び後方から見たとき脚杆a1、a2の下部が密着した状態となっているため、前後のテーブルの支脚を入れ子式に近接させる際、スムースに近接させることができないこと、特に、この種のテーブルは、キャスターを具備していないと多数のテーブルをスムースに近接せしめて収容することができないものであるが、右のように脚杆a1、a2が左右に密着結合していると、キャスターは左右及び前後に首を振る構造となっているため、後ろのテーブルの脚杆a1のキャスターと前のテーブルの脚杆a2のキャスターとが衝突してしまい、前後のテーブルを近接することが不可能になってしまうことが認められる。
しかしながら、本件考案の詳細な説明においては、右の点を解決する方法は、全く開示されていない。
これに対し、弁論の全趣旨によると、被告物件は、両支脚D1、D2をいずれも上部支脚Daと下部支脚Dbとに分離し、しかも、下部支脚Dbを2本の扁平角筒状の脚杆Db1、Db2を互いにわずかに開離して左右に並設する状態でその上端部を断面<省略>状の結合金具6により溶接して構成することにより、前後のテーブルの支脚を入れ子式に近接する際、二本の扁平角筒状の脚杆Db1、Db2が互いに左右に開離し適度の間隙を有している結果、スムースに近接密着せしめることができることが認められる。
そうすると、被告物件においては、脚杆Db1、Db2の上端部を断面<省略>状の結合金具6により溶接するという方法により、前方及び後方から見て、両脚杆を平行に開脚させた状態の構成とすることが可能となっているものと認められる。そして、そのような構成は、下部支脚Dbをまず形成した上、その上に上部支脚Daを連結する構成になっていることにより、可能となっているものと認められる。
したがって、被告物件は、本件考案とは別の構成を採ることにより、本件考案にはない新たで有意な作用効果を奏しているといえる。
他方、被告物件は、右のような複雑な構造としたため、本件考案の作用効果(4)中、「簡単な構造であり製作も容易である」という作用効果を奏しないものと認められる。
(二) 弁論の全趣旨によると、本件考案においては、脚杆a1、a2が高い位置で屈曲しているため、この部分が突出しており、使用状態において着座者の脚の側部方向への出し入れの邪魔になり、かつ、この部分に着座者の脚が当たるため塗装やメッキが剥げやすいという難点があることが認められる。
これに対し、弁論の全趣旨によると、被告物件では、前後方向に偏位した後、ノ字状に垂れ下がるという構成にしたことにより、本件考案のように高い位置で前後方向に突出する部分がなく着座者の側部方向への脚の出し入れの邪魔にならないとともに、脚が当たり難いので塗装やメッキも剥げ難いという利点があることが認められる。
したがって、被告物件の脚杆の構成は、右の点において、本件考案にはない有意な作用効果を奏しているといえる。
4 実質的同一性と均等
(一) 被告物件が上部支脚Daと下部支脚Dbとを連結する構成となっており、被告物件の脚杆Da1、Da2、Db1が本件考案の脚杆a1に該当しないことは前示2(二)のとおりであり、被告物件の構成が本件考案の構成と異なることにより、新たで有意な作用効果を奏すること、他方、本件考案の作用効果(4)中、「簡単な構造であり製作も容易である」という作用効果を奏しないことは、右3(一)のとおりである。
したがって、被告物件の支脚構造をもって、本件考案の支脚構造と実質的に同一であるとすることはできず、また、均等であるとすることもできない。
(二) また、被告物件の脚杆Db1、Db2の下部の形状が本件考案の構成要件(2)の偏位、屈曲、垂下という形状の要件を充たしていないことは、前示2(三)のとおりであり、右脚杆下部の形状が、本件考案の脚杆下部の形状と異なることにより、本件考案にはない有意な作用効果を奏することは、右3(二)のとおりである。
したがって、被告物件の脚杆下部の形状をもって本件考案の脚杆下部の形状と実質的に同一であるとすることも、また、均等であるとすることもできない。
5 以上判示したところによると、被告物件の構成をもって、本件考案の技術的範囲に属するとすることはできない。
三 よって、原告の請求は、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 森義之 裁判官 岩松浩之)
物件目録
一名称及び品番
名称 会議用テーブル
品番
<省略>
二 図面の説明
第1図は左右一対の支脚(D1)(D2)の外側部上方を覆っているカバーを取外した状態の左側面図である。
第2図は同正面図である。
第3図は同底面図である。
第4図は同背面斜視図である。
第5図は同甲板を垂直にして収納する状態の概略左側面図である。
第6図は同背面図である。
第7図は同多数のテーブルを接近させて収納する状態の左側面図である。
第8図は同甲板を垂直にして収納する状態の正面斜視図である。
第9図は支脚の分解正面斜視図である。
三 構造の説明
<1> 左右一対の支脚(D1)、(D2)の上部にまたがる平板製甲板(B)を水平の使用状態から両支脚の上部前後側で垂直にした収納状態に変化できるようにして両支脚(D1)、(D2)により支持するように装設し構成するテーブルにおいて、
<2> 両支脚(D1)、(D2)は、いずれも上部支脚(Da)と下部支脚(Db)により構成され、上部支脚(Da)は、2本の扁平角筒状の脚杆(Da1)、(Da2)を直立状態で前後に一定間隔をおいて並設し脚杆(Da1)及び(Da2)の上端部に跨って甲板支持板(4)を溶接すると共に、同下端部より若干上方位置の両脚杆(Da1)、(Da2)の間に断面<省略>状のスペーサー兼下部支脚連結金具(5)を内方に突出する状態で溶接することにより形成され、下部支脚(Db)は、2本の扁平角筒状の脚杆(Db1)(Db2)のいずれもその上部に垂直部分が存在し、それに続く部分がノ字状に伸びているが、一方の脚杆(Db1)は前方に、他方の脚杆(Db2)は後方に伸びており、両脚杆(Db1)(Db2)は互いに僅かに開離して左右に並設する状態でその上端部を断面<省略>状の結合金具(6)により溶接することにより形成され、下部支脚(Db)の上端部を上部支脚(Da)を構成する2本の脚杆(Da1)(Da2)間に脚杆(Da1)及び脚杆(Da2)と脚杆(Db1)とは正面から見て同一垂直面になるように配置して嵌入し、下部支脚(Db)の結合金具(6)の上面を下部支脚連結金具(5)の下面に突き合わせて螺じ止めすることにより上部支脚(Da)と下部支脚(Db)を連結し、
<3> 両支脚(D1)、(D2)における脚杆(Db1)(Db2)中、前方にノ字状に伸びる部分を有する脚杆(Db1)を外側に位置せしめ、後方にノ字状に伸びる部分を有する脚杆(Db2)を内側に位置せしめた、
<4> テーブルにおける支脚構造
四 符号の説明
B ……… 甲板
D1、D2 ……… 支脚
Da ……… 上部支脚
Db ……… 下部支脚
Da1、Da2、Db1、Db2
……… 扁平角筒状の脚杆
4 ……… 甲板支持板
5 ……… 断面<省略>状のスペーサー兼下部支脚連結金具
6 ……… 断面<省略>状の結合金具
五 参考図
本件実用新案公報第2図に対応する図面である。
以上
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
<省略>
第5図
<省略>
第6図
<省略>
第7図
<省略>
第8図
<省略>
第9図
<省略>
参考図
<省略>
別紙 <19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告
<12>実用新案公報(Y2) 昭62-501
<51>Int.Cl.4 A 47 B 3/08 13/02 識別記号 庁内整理番号 8608-3B 8608-3B <24><44>公告 昭和62年(1987)1月8日
<54>考案の名称 テーブルにおける支脚構造
<21>実願 昭58-64679 <55>公開 昭59-169733
<22>出願 昭58(1983)4月28日 <43>昭59(1984)11月13日
<72>考案者 北村八郎 小牧市大字上末字東山3509番地の190 株式会社ホウトク内
<71>出願人 株式会社 ホウトク 小牧市大字上末字東山3509番地の190
<74>代理人 弁理士 金子昭生
審査官 新井正男
<57>実用新案登録請求の範囲
両側方の両支脚A1、A2の上部にまたがる平板製甲板Bを水平の使用状態から両支脚A1、A2の上部前後側で垂直にした収納状態に変化できるようにして両支脚A1、A2により支持するように装設し構成するテーブルにおいて、両支脚A1、A2とも上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状の2本の脚杆a1、a2よりそれぞれ形成し、両支脚A1、A2における外側方と内側方の脚杆a1、a2の下部が前後方向の同一方向に向くようにしてそれぞれ両脚杆a1、a2の上部1、1を左右に並設して結合し構成したことを特徴とする支脚構造.
考案の詳細な説明
本考案はテーブルにおける支脚構造に関する.
すなわち、両側方の両支脚の上部にまたがる平板製甲板を水平の使用状態から両支脚の上部前後側で垂直にした収納状態に変化できるようにして両支脚により支持するように装設し構成するテーブルにおいて、甲板を垂直にして収納状態にした多数のテーブルを充分に接近させて狭いスペースに多数のテーブルを良好に収容することができるとともに、隣り合うテーブルどおしが外れないように噛合うようにして整然と収納することができるようにし、しかも、使用状態では甲板を堅固に安定良く支持することができ、簡単な構造にして製作も容易で好適に実施できるよう提供するものである.
次に、図面に示す実施例について説明する.
A1、A2は両側方の支脚全体を示し、両支脚A1、A2の上部にまたがる平板製甲板Bを水平の使用状態から両支脚A1、A2の上部前後側で垂直にした収納状態に変化できるようにして両支脚A1、A2により支持持できるよう従来形構造同様に構成するが、支脚A1、A2による甲板B支持の構造は公知構造を採用するので図示省略する.
両支脚A1、A2にそれぞれ2本の脚杆a1、a2よりなり、各脚杆a1、a2は上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状となるようにそれぞれ形成し、両支脚A1、A2における外側方の脚杆a1、a2の下部2、2が前後方向の同一方向に向くとともに内側方の脚杆a1、a2の下部2、2が反対側の同一方向に向くようにして、外側方の脚杆a1の上部1と内側方の脚杆a2の上部1とを左右に並接して上下2ケ所のリベツト3、3により結合し構成する.
したがつて、第1図ないし第4図に示すように、甲板Bを水平に展開しておくと、両側下方の支脚A1、A2がそれぞれ2叉状の脚構造により甲板Bを堅固に安定良く支持できることになる.
また、第5図および第6図に示すように、甲板Bを両支脚A1、A2の上部前後側で垂直にして収納状態に変化させることができるが、そのようにした各テーブルを寄せて狭いスペースに収容する場合、一方のテーブルの両支脚A1、A2における脚杆a1、a2の下部2、2の外方に、他方のテーブルの両支脚A1、A2における脚杆a1、a2の下部2、2を合わせて押し込み、順次、各テーブルを同様に押し込むと、第7図に示すように、各テーブルの両支脚A1、A2における脚杆a1、a2の下部2、2どおしが前後に接近して、横方向には相互に移動できない状態で収容できることになる.
このように本考案は、両側方の両支脚A1、A2の上部にまたがる平板製甲板Bを水平の使用状態から支脚A1、A2の上部前後側で垂直にした収納状態に変化できるようにして両支脚A1、A2により支持するように装設し構成するテーブルにおいて、両支脚A1、A2とも上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して串曲し垂下する形状の2本の脚杆a1、a2よりそれぞれ形成し、両支脚A1、A2における外側方と内側方の脚杆a1、a2の下部が前後方向の同一方向に向くようにそれぞれの両脚杆a1の上部1、1を左右に並設して結合し構成したから、甲板Bを垂直にして収納状態にした多数のテーブルを、それぞれの支脚A1、A2の接近により充分に接近させて、狭いスペースに多数のテーブルを良好に収容することができ、また、横方向には脚杆a1、a2の下部2、2が係合することになつて隣り合うテーブルどおしが外れないように噛合うように整納することができ、しかも使用状態では2叉状となる両支脚A1、A2により甲板Bを堅固に安定良く支持することができ、簡単な構造にして製作も容易で好適に実施できる特長を有する.
図面の簡単な説明
図面は本考案の実施例を示し、第1図はテーブルの概略側面図、第2図はその正面図、第3図はその底面図、第4図はその斜視図、第5図は甲板を垂直にして収納する状態の概略側面図、第6図はその正面図、第7図は多数のテーブルを接近させて収納する状態の側面図を示す.
A1、A2……支脚、B……甲板、1……上部、2……下部、a1、a2……脚杆.
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
<省略>
第5図
<省略>
第6図
<省略>
第7図
<省略>
別紙
脚杆説明第1図(甲図)
本件考案の脚杆a1、a2の各下部2の形状
<省略>
(拡大:本件実用新案の願書に添付の第1図の約4倍)
脚杆説明第2図(乙図)
被告物件のDb1の形状
<省略>
(縮尺:約2分の1)
脚杆説明第3図(丙図)
<省略>
(縮尺:約2分の1)
別表
<省略>
実用新案公報
<省略>
<省略>